GENELEC 8030AとYAMAHA NS-10Mを比較してみた

NS-10Mの修理サポートが終了してから、モニタースピーカーとしてよく名前を聞くようになったGENELEC ( ジェネレック ) の8030CP

GENELEC ( ジェネレック ) / 8030CP

小型で多機能な定番のモニタースピーカー GENELEC 8030CP

サウンドハウスについては解説記事をご覧ください。

今回は旧モデルであるGENELEC 8030Aを測定して、その特徴について書いていきたいと思います。

以前NS-10Mを測定したデータと比較していますので、新旧スタンダードでどのような違いがあるのかご覧ください。

GENELEC 8030について

8030C - ジェネレックジャパン
自由度の高い設置性と、高い精度の両立。厳しい要求にも対応する8030Cは、Genelecならではの精度と信頼性が結集されたスタジオ・モニターです。

北欧フィンランド、GENELEC社のスピーカー。同社は小型の機種からラージモニター、サブウーファーまで幅広く取り扱っていて用途に合わせて細かく商品を選ぶことができます。

関係ないですが、2017年には同軸モデルの 8331APが新たなラインナップに加わりました。同軸の音がモニターしやすくて好きなので、個人的にはこのモデルが非常に気になっているところです。

 8331AP

特徴

  • 頑丈なアルミ製MDE™(Minimum Diffraction Enclosure)の驚くほど美しいルックス、丸みのある筐体、色付けのない正確な音再現を提供。
  • DCW™(Directivity Control Waveguide)が、軸上/軸外で正確に周波数を再現。内部リフレックス・チューブ・デザインによる最適化されたフローと最大化された内部ボリュームが広範な低周波と高SPLを実現。
  • Genelec ISS™(Intelligent Signal Sensing)回路がシステムの停止を自動検出し、環境に優しい省電力スタンバイ・モードに切り替えます。

(メーカーサイトより抜粋)

コンパクトな筐体にアンプや簡易イコライザーなどがついていて、他に特別な機器を準備しなくてもセットアップできます。中継車や仮設ブースなどで使う際には非常に重宝します。

8030は、8xxxシリーズの中でも小型の機種で、小規模なブースや中継車での使用に適したスピーカーです。

全体的に曲面を多用した設計になっていて、定在波を減らすための工夫がなされています。アルミ筐体のためサイズにしては重量がありますが、マット加工が施されているため可搬性は高いです。

レベルを自動検知して、使っていないときは消費電力を抑える機能が付いています。背面のスイッチでオン・オフができます。

仕様

  • 最大出力:104dB
  • 周波数特性(-6 dB):47 Hz – 25 kHz
  • 周波数特性(± 2.0 dB) :54 Hz – 20 kHz
  • ウーファー:50W 5インチ
  • ツイーター:50W 3/4インチ・メタル・ドーム
  • アンプ駆動方式:クラスD
  • H 299 x W 189 x D 178 mm(Iso-Pod™ 含む)
  • 重量:5.0 kg
  • 入力:1 x XLRアナログ入力

(メーカーサイトより抜粋)

実測値

測定環境

  • 使用ソフト:REW (Room EQ Wizard)
  • オーディオインターフェイス:MOTU Traveler(校正済)
  • アンプ:スピーカー内蔵
  • マイク:Dayton Audio EMM-6、ソフト内校正データ適用済み
  • 測定方法:こちらの記事をご覧ください。
  • スピーカーと対象との距離:20cm

周波数特性

  • 素の特性は正直、あまり良い結果がでませんでした。85dBを中心に±6dBです。特に気になるのが150Hzを中心としたピークで、これによってかなりボンついた音の印象をうけます。

※比較的鳴らし込んだ個体を測定したので、経年変化でこのような特性になったのかもしれません。

※また、8030Cを所有している方から聞いた話では、C型はA型と比較して高域と低域のピークが少ないらしいので、Cの方が特性としてはフラットな傾向なのかもしれません。(あくまで聞いた話ではありますが、、、)

周波数のペア特性

左右のペア特性はかなりいいです。

10Mとの比較データ(:NS-10M :スピーカー)

やはり150Hzと8kHz以上のピークが気になります。

とはいえ、このスピーカーにはイコライジング用のスイッチがついています。

各スイッチを入れた際にどのように変化するか、まとめました。

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ベースロールオフスイッチをオンにした時

サブウーファーを併用するためのスイッチで、85Hz以下が2dBほどロールオフします。

トレブルチルトをオンにした時

4kHz付近の落ち込みが若干気になりますが、高域の気になるピークが減少しています。

ベースチルト -2dB

ロールオフスイッチと違って、低域のピークがクリティカルに減っています。

ベースチルト -6dB

こちらはさらにピークが減って、フラットな特性になりました。

ベースチルトスイッチは重ねがけすることも可能なので、調整幅は大きいです。

このように、スイッチ次第でかなり調整することができます。スピーカーと測定器さえあれば、環境に合わせた柔軟なチューニングができる点がGENELEC最大の強みだと思います。

優秀だと思ったのが、背面のスイッチでイコライジングをしても、位相やインパルス特性には全く影響しなかった点です。

さすがに歪率は変化が確認できましたが、その他の特性には影響が出ないように配慮されているようで、気兼ねなく使うことができます。

位相特性

  • 位相管理はしっかりしているように感じます。変化量も変化の幅も小さいです。

位相のペア特性

位相特性の左右差はほぼありません。NS-10Mより高域のペア特性が優秀です。これにはびっくり。

10Mとの比較データ(:NS-10M :スピーカー)

クロスオーバーポイントの違いが出ていますが、傾向としてはほぼ似たような特性になっています。

応答特性

  • 100μ秒で収束+箱なりが600μ秒ほど、こちらも優秀な特性になっています。

10Mとの比較データ(:NS-10M :スピーカー)

応答速度の速い10Mと比較しても遜色ない特性を示しています。

全高調波歪率

全体を通して1%以内になっています。

群遅延特性

まとめ

  • 位相・応答特性は優秀で、イコライジングしても影響なし
  • イコライジングは必須。環境に合わせて最適な設定を!

他のモデルの特性も気になるところですが、8030Aから伺えるモニタースピーカーとしての性能はなかなか良さそうです。

パワーアンプが不要でイコライジング機能も内蔵。このスピーカー1台あれば、どんな場所でもモニターとしてセットアップすることができるというのは本機の大きな魅力。

イコライジングスイッチは本当によく考えられています。特に個人が普通の部屋でミックスする場合、低域の篭りは大きな課題。そうでなくても狭い場所でモニターする場面でこの悩みはありがち。本機を使えばスピーカープロセッサーなどの特別な機器を使わなくても問題を解決できます。

「早い・安い・うまい」と、牛丼ではないのですが三拍子揃ったスピーカーですので、安価にモニター環境を構築したい方にはおすすめできるスピーカーです。

GENELEC ( ジェネレック ) / 8030CP

小型で多機能な定番のモニタースピーカー GENELEC 8030CP

サウンドハウスについては解説記事をご覧ください。