以前REWの使い方でも紹介した卵型スピーカー、Olasonic TW-S7を測定していきます。
TW-S7について
2010年に発売されたPCスピーカーで、東和電子というメーカーが開発しました。東和電子はソニーの元技術者の方々が集まってできた会社で、現在はインターアクションという会社にOlasonicブランドを譲渡しています。
特徴的な形をしていて1万円を切る価格ながら、クリアな音質で人気になり2016年のヴィジュアルグランプリで受賞をするなど、当時話題になりました。現在でもOlasonicシリーズはラインナップを増やしつつ販売が続けられています。
特徴
- USBのみの簡単接続
- USBバスパワーのみで10W+10Wのハイパワーを実現
- パッシブラジエータによりサイズを超えた重低音再生
- シャープな定位とクリアで臨場感ある音場を再現
- 理想的な卵型音響キャビネット
- 高性能シリコン製インシュレーター
(メーカーサイトより引用)
サイズ以上の低域と、ポイントソースならではの定位の正確さが最大の持ち味です。迫力ある音ではありませんが、目の前に演奏者が見える様なモニターが可能です。
また球に近い形状をしているため、エンクロージャー内の定在波やユニット前面での不要な反射が少ないです。このため位相の乱れが少ない音であることも特徴的です。
仕様
- 周波数特性:60〜20kHz
- 最大出力:10W
- ユニット:6cmフルレンジ、6cm発泡ウレタン製パッシブラジエーター
- サイズ:108×108×141mm
- 重量:950g
実測値
測定環境
- 使用ソフト:REW (Room EQ Wizard)
- オーディオインターフェイス:MOTU 896HD
- アンプ:スピーカー内蔵
- マイク:Dayton Audio EMM-6、ソフト内校正データ適用済み
- 測定方法:こちらの記事をご覧ください。
- スピーカーと対象との距離:20cm
今回は出力がUSBのため、インターフェースの校正データは使っていません。
周波数特性
- ±5dB区間は150〜10kHzというところでしょうか。カタログスペックとはずいぶん違いますが、6cmユニットであれば妥当な数値と言えます。
- 左右のペア特性については高域でやや左右差が見られますが、値段を考えるとかなり頑張ってくれています。
- 200Hzあたりにかけてブーストされている様に見えます。パッシブラジエーターはおそらくこの辺りにピークが来る様に設計されていると考えられます。
10Mとの比較データ(青:NS-10M 緑:TW-S7)
位相特性
- 200〜10kHzにかけて綺麗な特性になっています。前回測定した時と変わりなく、フルレンジの強みが現れています。
10Mとの比較データ(青:NS-10M 緑:TW-S7)
NS-10Mがクロスオーバーである2kHz付近で位相がまわっているのに対して、TW-S7は10kHzまで綺麗に伸びています。特に中域の部分でひずみのない音が期待できます。
応答特性
- 収束するまでにおよそ1.1ミリ秒かかっています。内部のアンプのダンピングが弱いのか、他のスピーカーと比較して少し遅いです。
10Mとの比較データ(青:NS-10M 緑:TW-S7)
ちょっと見づらいですがNS10Mの箱鳴りの部分に、TW-S7の付帯音が重なっています。収束は遅いですが、波形自体は綺麗です。
全高調波歪率
1%以内の区間が200Hzまでとなり、低域でややひずみが多い印象です。
群遅延特性
100Hz〜10kの区間で特に大きな乱れはありませんでした。
まとめ
- 中域については、周波数・位相ともに理想的な特性
- 高域は早めにロールオフしている。低域にややピークあり
- 箱に強度があり、箱なりが少ない。
- 内蔵のデジタルアンプはややひずみが多い印象。
- 点音源ならではの定位の良さも魅力的
フルレンジ一発のスピーカーは、レンジが狭いながら定位がバシッと決まるために独特の魅力があります。
私はワイドレンジな音よりも、少しナローでもフラットで定位が正確な音が好きなので、音楽鑑賞もこれで快適にできています。
迫力ある音とは違う音を探されているのであれば一度試してみてはいかがでしょうか?