このスピーカー、実家のテレビ用スピーカーとして使っています。映画を見る時に迫力ある音で大活躍してくれるスピーカーです。
モニター用途で使っているわけではないのですが、Boseのコンシューマー向けスピーカーには明確な特徴があり、キャラを決めている要素はなんなのかを知りたかったので、今回はこのスピーカーを測定してみようと思います。
当初、NS-10Mと比較しようかと考えましたが、同じようなサイズのPCスピーカーであるOlasonic TW-S7との比較の方が良さそうだと考えたので、今回はPCスピーカー同士を比較してみます。(ちなみに値段は全然違います)
Bose M2(Computer MusicMonitor)について
このスピーカーはすでに販売しておらず、メーカーサイトにも詳細な説明がありませんでした。以下の記事で詳細に解説されています。
元々日本で開発されたM3(MicroMusicMonitor)というモデルがあって、そのM3を元にアメリカ向けに開発されたのがM2です。
機能面の違いとしてはM3は単三電池で駆動することができるため屋外でも使うことができるようです。音質面での違いもあるみたいですがM3は持っていないので詳しいことは不明です。
特徴
- 独自技術による低音再生
- シグナルプロセッサー内蔵のコンパクトデジタルアンプ
- オールアルミ構成による堅牢な筐体
- カード型リモコンで簡単操作
(取扱説明書より引用)
後ろに空いているスリットの部分が、Olasonicのスピーカーの時にも話に上がったパッシブラジエーターになっています。これによって低域の増強を行なっています。
箱を重く頑丈に、さらに形状を斜めにすることで、筐体の不要な共振を最大限抑えられるように設計されています。さらにこの形にすると接地面からの反射を抑え、リスナーの方向にスピーカーがまっすぐ向くというメリットもあります。
付属のリモコンは音量調整のみができるシンプルなもの。でもテレビ用として使う時にはかなり便利です。
意外に電源が大きいので、狭いスペースに置こうとすると、設置する時にはちょっと苦労します。
入力はステレオジャックのみ。もしBluetoothにも対応していたら販売終了しなかったのではないかと勝手に思っています。
仕様
- 入力端子 3.5mmステレオミニジャック×1
- 電源:AC100~240V(50/60Hz)
- サイズ:65×123×123mm
- 重量:右 0.6kg、左 0.5kg
(取扱説明書より)
- 発売:2007年(M3は2005年)
- 当時の価格:39,000円くらい
- スピーカーユニットについては、M3の取扱説明書に5cmフルレンジとの記載がありました。ユニットが同じかどうかは分かりませんが、おそらくM2もサイズは同じだと考えられます。
実測値
測定環境
- 使用ソフト:REW (Room EQ Wizard)
- オーディオインターフェイス:MOTU 896HD
- アンプ:スピーカー内蔵
- マイク:Dayton Audio EMM-6、ソフト内校正データ適用済み
- 測定方法:こちらの記事をご覧ください。
- スピーカーと対象との距離:20cm
出力は896HDのヘッドホンアウトから取りました。インターフェースの校正データは使っていません。
周波数特性
ユニット自体は300Hzあたりから徐々にロールオフしていって、その後80Hz付近をピークにパッシブラジエーターで低域を強力にブーストしていると考えられます。
TW-S7との比較データ(青:M2 オレンジ:TW-S7)
150Hz付近がディップになり、80Hz付近はブーストされています。こうしてみると、M2の低域補正はかなり極端なチューニングをしていることが分かります。
80Hz付近は音というよりは空気振動に近くなります。こういうイコライジングをして見ると分かるのですが、バスドラムやベースなどの楽器は音像が大きくなる代わりに音圧が増したように感じます。
またTW-S7と比較して高域が15k付近まで減衰しないで伸びています。これは位相の測定結果から推測すると、おそらく内部で高域の補正を行なっているのではないかと考えられます。
位相特性
TW-S7と比較して全帯域で変化量が大きく、反転するポイントも多いです。高域が10kHz付近から急激に位相変化しているので、この辺りからシグナルプロセッサーを使って補正をかけているのではないかと考えられます。
また低域についても、ただパッシブラジエーターを置いただけであんなにブーストされるとは考えにくいので、シグナルプロセッサーでなんらかの処理を行っているのではないかと考えられます。
TW-S7との比較データ(青:M2 オレンジ:TW-S7)
比較するとより分かりやすいです。位相変化による音質の変化は許容しつつ、ワイドレンジを狙ったスピーカー設計であると考えられます。
応答特性
630μ秒あたりで収束しています。箱の鳴きは抑えられているようです。この辺りはTW-S7と大差ありませんでした。
全高調波歪率
1%区間は220Hzまでです。この辺りもTW-S7とあまり変わりありません。
群遅延特性
比較画像のみ
TW-S7との比較データ(青:M2 オレンジ:TW-S7)
高域と低域でM2のほうが変化量が多いことがうかがえます。
まとめ
- 低域はフラットな特性よりも迫力を重視
- 高域はワイドレンジ狙いの設計
- エンクロージャーの設計がしっかりしている
- 原音忠実性よりも聴感上の心地よさ = Boseの音(?)
Boseのスピーカーはコンセプトがはっきりしていて、とても好きなスピーカーです。位相特性は良くないと書きましたが、変化した音質が心地よいと感じられるのであれば、ホームユースにおいてなんの問題もありません。
Boseのすごいところは機種が変わっても音の印象があまり変わらないことで、これは技術力がないとなかなか出来ないのではないかと思います。
このスピーカーはもう販売していませんが、もし他のBoseのスピーカーを聞いてみて音が気に入るようであれば、ちょっとお高いですが買う価値はあると思います。
現行製品(2019年1月時点)のCompanion 20も測定していますので、よかったらご覧ください。