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測定用のマイクが欲しかったので、イントロダクションの記事でも紹介した、DaytonAudioのEMM-6を購入しました。
購入価格は¥9363円、送料無料でした。定番と言われる測定マイクと比べると10分の1以下という破格の値段になっています。
外観
コンパクトなケースに入っているので、持ち運びに便利です。
付属品
- 個体別の測定データとシリアルナンバー
- マイク本体:袋にシリカゲルと一緒に入ってます。
- 風防用スポンジ:必須です。
- 三脚:おまけ程度。メインに使うには不十分。
- マイクホルダー:かなり力を入れないとはまらないので、抜け落ちの心配なし。
と、測定する上で最低限のものは入っていましたが、スタンドだけは別に準備した方が良いでしょう。
そもそも測定マイクとは
厳密な意味での計測用マイクとは、IEC 61094(標準マイクロフォンについての国際規格)を満たしているもののことを言います。製品開発や研究用途でも使うことができる、きちんとした測定マイクはこの規格に準じている製品を使う必要があります。
規格を満たしている測定マイクの有名なメーカーとしてよく知られているのは以下の2社です。
- Earthworks
- B&K(ブリュエル・ケアー)
楽器用のマイクとして使うケースもありますが、本来用途の異なるマイクであることに注意しましょう。
EarthWorksには楽器用マイクのラインナップもありますので、楽器の集音用途であればそちらを購入されることをお勧めします。
今回購入したマイクは、それっぽく作ってはいますがIECの規格を満たしてはいません。その辺にあるマイクと比べると、フラットな周波数特性だから身近な機器の測定に使えますよ〜、といったくらいの商品です。
ただ実際に本格的な測定をしようとした場合は、マイクだけではなくマイクアンプや録音機材、部屋のノイズや反響の除去なども十分に考慮しなければならないので、マイクだけ良くてもあまり意味はありません。
そこそこフラットなマイクの活躍する機会は十分にあります。
ただ今回は、ちょっとかわいそうですがEarthWorks M30というきちんとした測定マイクと比較してみて、このマイクの弱点をあぶり出してみます。弱みを知ってこそ効果的な使い方もわかるものです。
EarthWorks M30 vs EMM-6
周波数特性
Earthworks M30
以下の図はEarthworks M30(以下M30)の周波数特性です。
(ちなみに、型番のMはMeasurement:測定を意味していて、後ろの数字が測定可能な周波数上限をあらわしています。このマイクは30kHzまで測定が可能になっています。)
これ本当なの?と疑いたくなるようなフラットな周波数になっています。
ごくわずかな低域の減衰と高域のピークディップを除けば、ほぼ0dBにはりついています。校正ファイルを使用できないような環境でも、かなりの精度で測定ができます。
これにさらに校正ファイルを使用することで、0.1dB単位の測定を可能にします。
EMM-6
こちらはEMM-6を購入した際についてきた、個体別の周波数特性です。
1万そこらのマイクとしては優秀ですが、それでも場所によってだいぶ特性が暴れています。目視で最大3dB近い変化が見られます。
校正データなしで測定したデータを扱う際には注意が必要です。
耐圧レベル
M30が140dBなのに対して、EMM-6は127dBとちょっと低いです。
ドラムのキックやスネアに構える時の耐圧の目安が140dBなので、PAスピーカーをライブで測定するときなんかは注意したほうが良いかもしれません。
Polar Response(指向特性)
測定マイクに使われるのは無指向性マイクですが、普通のマイクでは角度ごとに集音ムラがあります。角度を変えても均一に集音できることが測定マイクでは重要になってきます。
M30では以下のようになっています。
非常に綺麗な円になっています。サラウンド音響の絶対的な測定・評価も可能でしょう。
EMM-6には指向特性についての記載が一切ありません。
つまりサラウンドの絶対的評価に用いることはできないでしょう。
インパルスレスポンスについても記載がないため、同様のことが言えます。
まとめ
EMM-6を使った測定では、校正データを用いれば周波数特性について一定の評価ができるでしょう。そのほかのデータについて絶対的な評価はできません。ただし基準となる機器を決めれば、比較という形での測定は可能です。
自分の中でのリファレンスとなる機器を決めておいて、それと比べて良いか悪いかを考える上では十分に使えるデータが収集できるでしょう。
EMM-6を使ってこれから色々と測定していく予定です。