録音・収録スタジオを使いこなす上で、とても大事な要素の一つであるレベル管理。適切なレベル管理ができるようになって、不要な事故・トラブルを回避するためにはどうしたらいいか?レベル管理を理解する上で必要なレベルダイヤについて解説していきます。
たくさんの機器が設置されているスタジオ。音が通過する機器の数は、少ないところでも10〜20程度はあります。
たくさんの機器を破綻しないように接続するためには、レベル管理が大切です。
もし、適切に管理をしなかったら、こんな弊害が起こります。
- 最大音量でも音が小さい
- ノイズがひどい
- クリップノイズが発生する
普段使っているシステムでこんな問題が発生していた場合は、レベルの管理が適切かを一度見直してみましょう。
管理の基本
レベル管理で重要になる基本的な項目は以下の3つ
- 「大きく出して、小さく受ける」
- 「機器を知る」
- 「レベルダイヤを理解する」
「大きく出して、小さく受ける」
出力側のレベルを大きくすることで、機器内のノイズの発生を抑えることができます。さらに、レベルが大きくなることによって外部からノイズが飛び込みにくくする効果も期待できます。
逆に入力側ではあまり大きなレベルにしてしまうとクリップノイズを発生させてしまいますので、最大入力レベルを超えないようにしてあげる必要があります。
大きく出して小さく受けるようにすれば、ノイズの発生を極力抑えることができます。
「最大入出力レベルを知る」
入り口から出口まで、使われる機材はさまざま。レベルもバラバラです。
各機器の標準レベルについてはご覧のようになっています。
- マイクなど -60dB
- LINE(民生機) -10dB
- LINE(業務用) +4dB
- 基準レベル 0dBm(-0.775V/1mW)
- ヘッドマージン +6〜20dB
ヘッドマージンとは信号がクリップしないように設けられている余裕のことで、用途によって異なります。
放送局では+20(+4)dB、PAなどでは+6dB〜10dB程度となっています。
各機器の入出力レベルやヘッドマージンを意識することで、システムについての理解が進みます。
「レベルダイヤを理解する」
レベルダイヤとは、チャンネル毎のレベルの変化をグラフにしたものです。
これを見ることで、
- 機器の標準レベル・クリッピングレベル
- ヘッドアンプのゲイン
- 全体を通したヘッドマージンの変化
などの情報を知ることができます。
ラインによって機器構成が異なる場合はそれぞれに対してレベルダイヤを準備する必要があります。
接続する機器が少ないのであればレベルダイヤまで準備する必要はありません。機器がたくさんあるのであればきちんとレベル管理しておかないと予期しないクリップが発生して収録を止めてしまうおそれがあります。
デジタル収録の場合はクリップについて特にシビアに考えなくてはなりません。
レベルダイヤの書き方
ExelまたはNumbersなどの表計算ソフトを使うことで、簡単に書くことができます。
こちらは先ほどのレベルダイヤを描いた時のシートになります。
縦軸に入力ソース、横軸に機器のIn・Outを信号の流れに沿って記入します。
値には各ポイントを通過した時の信号レベルを記載します。トリム・ゲインを行なっている場合にはそれも記入します。
悪い事例
ありがちなミスについて見ていきましょう。
レベルの上げすぎ
音が小さいからといって、中間のアンプやミキサーでゲインを上げすぎたりしていませんか?これをやってしまうと、一箇所だけマージンが狭いポイントができてしまい、システムのボトルネックとなってしまいます。
入り口から設定を見直しましょう。もしくはヘッドマージンが広い他の機器で増幅をするなどしてボトルネックを避けるようにします。
レベルの下げすぎ
今度は逆に下げすぎてしまっている例。ヘッドマージンは十分ですが、S/Nのことを考えると好ましくありません。過度なアッテネートはしないようにします。
終わりに
レベルの流れを可視化することで、システムのボトルネックを見つけ出して不要なノイズやクリップとは無縁のシステムを構築しましょう。
レベルダイヤは表計算ソフトを使えばとても簡単に作ることができます。一度きっちり仕様書を作成してみてはいかがでしょうか?