スピーカーユニットはなぜ箱に入っているのか?

 

20年前から考えると、音楽を聴く環境はガラリと変化しました。私が子供の頃はまだカセットテープが普通にあったのに、今や音楽を聴く環境はスマートフォンのストリーミング配信に置き換わってしまいました。大きなコンポを持っている人も少なくなったのではないでしょうか?

これだけ音楽をとりまく環境が変化しているのに、小型化が進んでいる以外ほとんど仕組みが変わっていないのがスピーカーです。

でもそのバリエーションは意外に豊富で、シンプルな構造ながら調べると奥が深いです。今回はそんなスピーカーの仕組みについてまとめてみました。

広告

音が出る仕組み

 

スピーカーユニットの仕組みはこんな感じになっています。

  • 大きなマグネットの中にコイルが設置されている
  • 電気信号が流れるとボイスコイルが前後に動く
  • ボイスコイルが動くことでコーンが振動して音になる

これがほとんどのスピーカーが採用しているダイナミック駆動という仕組みです。他にリボンタイプ(:とても薄い金属膜を振動させる方式)やコンデンサタイプなどといったものも存在します。

マイクの種類をご存知の方は気づかれたと思いますが、スピーカーの駆動方式とマイクの駆動方式は、入力と出力という違いがありますが、とてもよく似ています。音⇄電気信号にするための仕組みは、昔からあまり大きく進化していないのです。

方式自体の変化はありませんが、使われているマグネットは大きく変わってきています。

  • 以前:アルニコ・フェライト主流
  • 現在:ネオジウム磁石が徐々に浸透

ネオジム磁石のおかげでスピーカーの小型・ハイパワー化が可能になりました。

マグネットの種類は株式会社テクノプラン様のサイトが綺麗にまとまっています。

なぜ箱に入っているのか?

ユニットがしっかり振動するんだから、これだけで音が出そうな気がします。しかしユニットだけでは音になりません。

音は低い周波数になると、前ではなく後ろにも進むようになります。そうなると、前後では位相が逆なので、相殺ないし減衰してしまいます。

箱に入れていないスピーカーユニットはシャリシャリと痩せた音になってしまうのですが、これは低域が相殺しあって、直進性(まっすぐ進む力)の高い高域だけが残ってしまうためです。

これが、スピーカーがユニットだけでは成立しない理由です。そこで、ユニットの間に板を挟む手法が考え出されました。

様々なスピーカーのタイプ

平面バッフル

もっとも原始的なものが平面バッフルスピーカーです。見ての通り板に穴を開けてユニットを取り付けただけのものです。

シンプルですがこんなものでも後ろから回り込んでくる音を間に挟んだ板でシャットアウトすることがでできます。

もっともユニットの素の特性が出る形式で、フラットな音が特徴です。

ところが問題もありました。より低い周波数まで平面バッフルスピーカーで再生しようとすると、板が非常に大きくなってしまうのです。

平面バッフル:Wikipedia

平面バッフル - Wikipedia

背面開放型

平面バッフルは邪魔で仕方ない。そこで板を折り曲げてサイズを抑える手法が考え出されました。こうしてできたのが後面開放型スピーカーです。

名前の通りスピーカーの背中が空いている形をしてます。省スペース化しつつ、平面バッフルスピーカーよりも低域の再生限界をある程度伸ばすことができます。

エレキギターのアンプは低域を再生する必要がないため、今でもこのタイプが多いです。

しかし後方開放型でも低域を完璧に再生することはできません。ここから再生周波数帯域を伸ばすために様々なタイプのスピーカーが作られます。

ギターアンプとして有名なRoland JC-120

https://www.roland.com/jp/products/jc-120/

密閉型

箱を完全に閉じてしまったのが密閉型です。

完全密閉だと、スピーカーが動くときに空気バネが邪魔をして本来の動きができないのですが、空気バネが働くことを前提として設計されたスピーカーがAcoursticResearch(AR)社というところで開発されたことにより、世に広まりました。

後述するバスレフ型やホーンロードスピーカーに比べて、低域が詰まったような(よく言えば密度のある)音がします。共振や共鳴に頼らない方式なので、周波数特性はスピーカーユニットの特性に似た波形になります。

かつてスタジオでよく見られた AURATONE 5C

Auratone Products
Official Website of Auratone, Recording Monitors for the Real World

バスレフ

密閉型に穴を空けたのがバスレフ型です。筒状の部品を使って、ヘルムホルツの共鳴の原理で低域に共振点を作り、足りない低域を補う方式です。

共鳴の原理を使うため、ユニット単体ではならないような低域を鳴らすことができる代わりに、そこから下が全く鳴らなくなります。

背面にバスレフポートがあるGENELEC 8040

GENELEC | 8040
世界各地のレコーディング/ポストプロダクション・プロフェッショナルに選ばれているGenelec 8040Bの驚愕のパフォーマンスと多用途性でミックスの本当のサウンドを体験。

バックロードホーン

バスレフと似たものにバックロードホーンというスピーカーもあります。図のようにスピーカー内部が迷路のようになっていて、ユニット背面からの音を楽器のホルンのように内部で増幅します。

バスレフと違って、中低域の広い帯域をブーストさせることができます。真空管が主流の時代、出力が数Wしかないアンプも多く、音量を稼ぐには能率の高いユニットが不可欠でした。しかし能率を大きくすると低域の再生能力が下がるため、バックロードホーンは高能率ユニットの弱点を補う効果的なエンクロージャーとして盛んに使われました。

N-BOX スラッシュに採用されているバックロードホーン:FOSTEX

FOSTEX Back-Loaded Horn Special Site 1

ユニットが一つだと・・・

このように、再生できる周波数帯域を広くするためスピーカーには様々な種類の箱(エンクロージャー)があります。しかし、いくら箱を工夫してもユニットが1つでは分割振動などの問題があり、人間の可聴範囲(20〜20kHz)をひずみなく鳴らしきるのはとても困難なので、帯域別にユニットを複数使おうというのがマルチウェイ方式です。

スピーカーのユニットについて

帯域を受け持つユニットごとに構造が違います。種類別の一覧(目安)です。

  • サブウーファー:超低域(20Hz〜100Hz)
  • ウーファー:低域(50Hz〜800Hz)
  • フルレンジ:(100Hz〜15kHz)
  • スコーカー:中域(500Hz〜5kHz)
  • ホーンドライバー:中〜高域(500Hz〜15kHz)
  • ツイーター:高域(2kHz〜20KHz)
  • スーパーツイーター:超高域(5kHz〜100kHz)

製品によって多分に前後しますし、最近ではサブウーファーと銘打っておきながら、ウーファーと大して変わらないものもあったりします。

また音質・音量を考えなければいずれのユニットもかなり上の帯域まで再生できます。各ユニットのカタログをぜひ一度確認してみてください。

これらのユニットを組み合わせて、目的にあったスピーカーを設計します。よく見かけるのは、ウーファーとホーンドライバーを組み合わせた2Way方式のものですが、PA用途であったり大きなものでは3Wayや4Wayなどもあります。(PAではユニットごとにコンポーネント化して、現場に合わせて手持ちのユニットを組み合わせる手法もあります。また、2Wayタイプ+ウーファーなんてやり方もよく行われます。)

マルチウェイ方式は帯域を伸ばすことができますが、音源が線状になるため音像が大きくなってしまうデメリットもあります。これを解決するために同軸2Wayという方式も存在しますが、ここでは割愛します。

エンクロージャーに使われる材料

木材が多く使われていますが、プラスチックや樹脂、金属製のものも存在します。

使われている木材についてはこちらのサイト様に非常に詳しくまとまっています。

【第112回】高橋敦の “オーディオ木材” 大全 ~ 音と木の関係をまるごと紹介

【第112回】高橋敦の “オーディオ木材” 大全 〜 音と木の関係をまるごと紹介 (1/13) - Phile-web
【第112回】高橋敦の “オーディオ木材” 大全 〜 音と木の関係をまるごと紹介

楽器に使われている木材は、ほとんど使われていると考えて良いでしょう。PAスピーカーでは古いもので米松単板、最近では金属、剛性の高い樹脂やプラスチック、樺の集成材などが多い印象です。木材の場合は叩いた時に響きが少なく、わずかな響きも聞いていて心地よいものが好まれるようです。

終わりに

参考にした書籍

入門スピーカー自作ガイド―基本原理を知って楽しく自作! (学ぶ・作る・楽しむ・電子工作) 著:炭山アキラ 出版:電波新聞社

 

今回は構造についてまとめてみましたが、紹介できないくらいスピーカーには様々な種類があります。見慣れないスピーカーがあったら仕組みを調べてみると面白いかもしれません。